提 言 書


     20世紀後半、敗戦の焦土から、わが国民は奇跡の復興を成し遂げ、経済大国を築きあげてきました。
    日本の教育の仕組みはこの動きに有効に機能し、一定の成果をあげてきたと評価できます。     
     近年、経済構造は大きく変化し、少子高齢社会をむかえ、人々の価値観も大いに多様化しました。人
    類史の最先端に立ち、誰もが体験したことのない社会に直面したといえましょう。ここに教育制度の改
    革が求められる根拠があります。新しい時代に適応した教育制度が整えられてこそ、教育は力を発揮し、
    21世紀社会において、日本は多大の貢献をすることができます。
     教育は家庭において始まり、学校教育は幼稚園教育に始まり高等教育へとつながっていきます。今、
    そのそれぞれの段階で、すでに知られている多くの困難に直面しています。この困難を克服し、子ども
    たちを健全に育成することなくしてわが国の繁栄はありえません。この課題に関して、小学校入学前の
    教育に限定して提言させていただきたいと思います。
     すべての動物にとって、子育ては親の命がけの大事業です。子育てを他者が代行することはできませ
    ん。その中で、人間の子どもは哺乳動物の中でも、大人が持っている能力に対して、極端に過少の能力
    で生まれてきますが、生後すぐから外部の情報を受ける機能を相当高度に持っています。緊密な親子の
    関係を前提として、一対一で教育されることによって子どもは育っていくのです。この大原則が現在の
    日本の社会で揺らいでいるのは、きわめて危険なことです。
     親の利便性が優先し、子どもの育ち、発達といった視点を欠いた施策が展開されてきています。先進
    諸国は幼児教育を一元化し、教育を中心とした施策を展開しています。子ども同士が集団での生活を通
    して、知識を増やし、他者の心を読み取ることを学び、人としてより深く育っていくのです。
     子育てが苦しみであることを喧伝するような施策が、出生率を改善させるわけがありません。子育て
    は喜びであり、社会的にも価値ある仕事であることを具体的に示し、その上で生涯学習の視点から乳幼
    児期の教育制度を根本から考えていくことが必要です。
     現在、小学校入学前の子どもの育成は、学校教育制度としての幼稚園(文部科学省所管)と、福祉制
    度としての保育所(厚生労働省所管)とに分かれており、十分に整理・調整されないままに施策が展開
    されています。
     行政の一本化を前提に、家庭、幼稚園、保育所での子どもたちの教育を、子どもが幸福に育つといっ
    た観点から再構築しなければなりません。
     そのために、『小学校入学前の乳幼児の教育・養護のあり方を検討する会議』を内閣府に設置し、
    下記の事項について早急に検討することを提言いたします。


     (1)すべての子どもたちに良質な教育を保障する
     家庭教育の重要性と子どもを育てる上での家庭の責任を再確認し、その前提のもとで家庭教育と学校
    教育との連携のあり方を明確にする。その上で幼稚園と保育所における良質な教育を、すべての子ども
    たちに保障する。


     (2)子育て家庭への支援策
     労働時間は週48時間から40時間へと劇的に短縮された。その一方で保育所での保育時間は長時間
    化が進み、週50時間から60時間の保育も例外ではなくなっている。家庭において幸福に育つという子ど
    もの権利の観点からきわめて遺憾な事態であるばかりでなく、親として育つ機会を保護者から奪うこととも
    なっている。また保育時間の極端な長時間化は少子化対策としては機能していない。子育て家庭の支援
    策を、就労のあり方を含め検討し、有効かつ公正な具体策を立案する。


     (3)子ども省(仮称)の設置
     幼稚園教育は文部科学省、保育所は厚生労働省という二元行政を解消し、子ども省(仮称)として行政
    を一本化する。わが国の子どもたちを全体として把握した合理的かつ効率的な施策を展開し、生涯教育
    の視点から一貫した教育体系を構築する。


     (4)利用者にとって平等な公的助成
     行政を子ども省(仮称)として一本化した上で、公費の公正かつ効果的な支出を実現する。わが国のす
    べての子どもたちに公平で、納税者の立場からも適正な公費負担のあり方を確立する。

                                                               以 上



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